立て掛け式折りたたみ椅子

Created Date: 2020-10-21/ updated date: 2020-10-22
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Summary
私の住んでいる西東京市では、中学生や散歩中に疲れたご老人がガードパイプに腰をかけて休憩している光景をたまに見かけます。それは、下校中や散歩中に休憩するのにちょうど良いベンチがないからだと考えました。そこで、ガードパイプに立てかけられる折りたたみのイスを開発しました。

Materials

    Tools

      Blueprints

        Making

        • FAB 3D CONTEST 2020のテーマはfabのあるまちづくり。
          そこで、まず私が住んでいるまち、西東京市の抱えている問題を考えてみました。
          • 西東京市を歩いていると、高齢化が進んでいることをとても感じます。私の中では、高齢者といえば散歩をよくしているイメージがあります。実際、私の祖父もよく散歩をしていました。また、高齢化に伴い、当然認知症の方も多いことになります。FABコンに出るにあたって、慶応SFCに通っている六本木さんという方からアドバイスをいただきました。六本木さんによれば、認知症の方によくある症状として徘徊があるそうです。昔自分が住んでいた家を目指し、迷子になることもあるそうです。また、高齢者は若い人に比べて疲れやすいです。そんな高齢者が、まちで疲れて道路の脇のガードパイプに腰をかけているのをたまに見かけます。
          • そういえば、下校中の中学生がガードパイプに腰をかけて友達と話している光景も見かけます。
          • 散歩中や下校中、休憩にちょうどいいベンチがないという問題に対して、私なりにベストな解決策を考えました。この問題に対して、新しくベンチを作るスペースはありません。しかし、すでにあるものを利用しつつ場所を取らないものを私は考えました。それが、ガードパイプに立てかけて使える折りたたみの椅子、「立て掛け式折りたたみ椅子」です。右の画像は、実際に作り始める前にかいたスケッチです。
        • 本格的に取り掛かる前に、タミヤの部品で試作品をつくってみました。手をガードパイプに見立て、オレンジ色の試作品を折りたたんだり(1枚目の写真)、展開したり(2枚目の写真)できることが確認できました。これには平行リンク機構という機構を採用していて、座面(銀色の柱)と前の脚の動きが連動していて、なおかつ前の脚が背もたれと常に平行になるため折りたたんだり展開したりするときに脚の先が飛び出ません。
          • 試作品を作ってみて、実際に作れそうなことがわかったので現地を調査しました。
            • 最初に調査したのは、家から5分くらい歩いた場所にある道路の脇のガードパイプです。スマホの計測アプリを使って長さと高さを計測しました。長さは約3m、高さは0.85mだと分かりました。太さは測れなかったので、家に帰ってからインターネットで調べました。朝日スチール工業株式会社のホームページ(https://www.asahi-fence.co.jp/productdetail?product=63)によると、パイプの太さは42.7mm、支柱の太さは、60.5mmだそうです。
              ついでに、歩道の幅も測りました。歩道の幅は、約1.5mだと分かりました。
            • 六本木さんから、椅子を作るときに公園のベンチが参考になると教えてもらったので、公園のベンチを調査しました。座ってみると意外と座り心地がいいし、ベンチの隙間は雨水が座面にたまらないようにするための工夫と聞いていたので、ベンチが洗練されたデザインのように思えました。ただ、肝心な高さの測定に失敗していたことに後で気がつきました。
          • 測定したデータをもとにFusion360でモデリングしていきます。
            • 本物のガードパイプをもとに、必要のない部分は省き、3Dプリントしたときに立てられるように台をつけました。
            • 椅子の座りやすさは寸法で決まると六本木さんに教えてもらったので、寸法は慎重に設計しました。
              椅子の最適な寸法について調べてみると、SH(シートハイト)つまり座面の高さが鍵となることがわかりました。最適な座面の高さの計算方法はいくつかあるようですが、身長の1/4の高さと考えるやり方が一番簡単だと感じました。また、より具体的な数値が神奈川県福祉のまちづくり整備ガイドブックに記載されていました。これによれば、座面の高さは40~45cmとするべきだそうです。これは、SHの観点からみても、日本人男性20歳以上の平均身長が168cm、20歳以上の女性は154cmなのでこの間をとった値の約1/4にあたります。
            • 今回は折りたたみ機構を搭載するので、折りたたんだときもおさまりが良くなるように設計するため、Fusion360のジョイントという機能を今回初めて使いました。この機能は、部品と部品のつながりを、固めたり、回転やスライドをできるようにするものです。今回は、回転をつかいました。これにより、Fusion360内で椅子を閉じたり開いたりできるようになりました。
          • 少し複雑なものでも、比較的短い時間でデザインしたものを手に取ることができるのが、3Dプリンターの魅力です。さて、立て掛け式折りたたみ椅子を3Dプリントして、実際に役に立ちそうかどうかや問題点はないかを検証していきます。
            さすがに、家庭用3Dプリンターで実物大では印刷できないので、今回は20%のサイズで印刷しました。ただ、これでも印刷にかなりの時間がかかりました。また、印刷しやすいように、いくつかの部品を分割したり、一部形状の変更を行いました。
            • 支柱と支柱の間隔を実際の1/3の大きさにして、20%印刷しました。
              思った通りの出来に仕上がってよかったです。
            • アイデアを形にすることができてとても達成感がありました。そう作ったから当たり前なのですが、思っていた以上にイスでした。
              一方で、全てが上手く行ったわけではなく、パーツとパーツの噛み合いがイマイチだったり、印刷スピードを優先した結果強度が落ちてしまいネジ止めできなくなってしまうなどの反省点もありました。もし実物大を作る機会があったらこれらの反省点を踏まえてもう一度作ってみたいです。
              デザイン的に気に入った部分は、後ろ脚がない分浮いているようなデザインになっているところです。また、印刷のために座面のデザインを変更したのですが、公園のベンチのように隙間をつくり雨水が溜まりにくくしました。
          • 立て掛け式折りたたみ椅子をFABコンの審査基準に沿って自己評価していきます。


            ・提案の質:問題にたいして、すでにあるものを活かして場所を取らない物を作れたので100点です。

            ・技術の高さと完成度:デザイン自体はうまくできたのですが、パーツのかみ合わせや印刷の設定に問題があったので80点です。

            ・独創性:自分ならではの視点で問題を見つけ、解決策を提案できたので100点です。

            ・コストパフォーマンス:プラスチック系の樹脂で作る場合、木と金属を使うベンチに比べて安く作れるので、75点です。

            ・ドキュメンテーション:文字が多く視覚的に伝える工夫が少なかったので、自分の成長への願いもこめて75点です。
            • FAB 3D CONTESTは、まちの問題に目を向ける、良いきっかけになりました。また、製作を通して、私は課題に対してどう解決するかを考えるのが好きだということを改めて実感しました。
              今回作った「立て掛け式折りたたみ椅子」と「ガードパイプ」の3Dデータは添付しておきます。
              もし実物大のものを作れる人がいたら、この3Dデータを少し改良して実際に近所のガードパイプに試しに設置してみてもらえたら嬉しいです。出来がよかったら市役所からも許可をもらえるはず(?)です。

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