ペットボトル尿瓶コネクタ(小児用)

Created Date: 2025-07-08/ updated date: 2025-08-16
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Summary
★難病で全介助の息子(12歳)が使えるサイズの尿瓶は市販されていないため、トイトレを始めた3歳からずっとペットボトルを尿瓶に代用してきました。他に選択肢もなく、尿漏れがたまに発生するのを許容してきたのですが、息子の心身の成長および行動半径の拡大に伴い、ペットボトルの口径よりもゆとりがあるサイズで、車椅子に座ったままでも介助しやすい形状が欲しいと思い、ペットボトルの利便性はそのままに、コネクタ部分を作成することにしました。 ★ペットボトル接続部はCOCRE HUB WEBの「ペットボトルダンベラー」を参考にし、残りのパーツはTinkercadで試行錯誤を重ねて最終的にこの形に仕上げました。息子の協力で角度や長さを何度も観察・調整し、ベッド(仰向け)ではストレート、車椅子に座っているときは20度の曲がりがあると使いやすいと判明。「く」の字の曲がり部分から上の筒は短いほうが尿の逆流が発生しにくいこともわかりました。 ★一番苦労したのは筒の内側です。当初の設計ではペットボトルとコネクタの隙間からわずかに尿漏れが発生したので、いくつも試す中で漏斗の形状を取り入れて解決できました。またストレート型ではベッドと水平に近いくらいにペットボトルを配置することもあるので、ペットボトル側に尿が落ちるよう微妙な角度もつけました(※仰向けで使用する場合、息子の体格だとくの字型は逆流してしまいます)。縁はRをつけて滑らかに仕上げ、皮膚への当たりも改善されました。使用後に誤って尿入りペットボトルを倒したときに備えて、簡易キャップも作成しました。洗浄後は乾燥のため引っ掛けられるだけでなく、上下の目印にもなり、ペットボトルに装着するときに指が引っかかって回しやすくなる取っ手も装着しました。 ★成人サイズも市販の尿瓶サイズを参考に試作したものの、実際には使用していないため、今回は小児サイズ(3歳~12歳を想定)の2パターンに留めています。フィラメントは当初は白色PLAで作成しましたが、耐水性や視認性が良くなる半透明PETGがお勧めです。簡易キャップ(青)はPETGで作成してもハマりますが、TPUのほうが密閉性がより高まります。

Materials

    Tools

      Blueprints

        Making

        • ペットボトルを尿瓶に利用できるコネクタ(小児サイズ)

          ※stlファイルはこちら
          • PC:Windows11
            CAD:Tinkercad
            3D Printer:Bambu A1mini
            スライサー:Bambu Studio
            フィラメント:ELEGOO RAPID PETG(半透明クリア)、SainSmart TPU(青、簡易キャップ用)

            ※3Dプリンタは昨秋に購入。CADはビギナーレベルで、今回Tinkerで本格的に取り組んだことでだいぶ経験値が上がりました。
        • 対象者は、神経難病のために四肢麻痺で全介助の息子(12歳)です。乳児のときに神経難病を発症し、首座りもなく手を動かせないので、排泄はすべて介助が必要となります。
          排尿コントロールはできるようになったのですが、子供が利用できるサイズの尿瓶は市販されていないため、幼児の頃からペットボトルを代用してきました。ペットボトルはどこでも入手でき、汚れたら気軽に廃棄できる利便性があります。
          しかしペットボトルの飲み口の形状は、尿瓶としては正直使いづらいと感じてきました。
          • 息子の成長や行動半径の広がりに伴い、ペットボトルをそのまま使うのが一層難しくなってきました。ペットボトルの口径よりゆとりがあるサイズで、車椅子に座ったままでも使いやすい(介助しやすい)形状が欲しい、排尿を待つ間に介助者が手を放しても大丈夫な形が欲しい(仰向けの場合のみ)、と思うようになり、ペットボトルの利便性はそのままにコネクタを開発することにしました。

            ※一般的な尿瓶は成人向けサイズしか市販されていません。成人男性の外出時、その大きな尿瓶は持参しづらく、我慢してオムツにするしかないとヘルパーさんや訪問看護師さんに聞きました。こういう尿瓶コネクタがあれば問題解決になると思います。
              • ペットボトル接続という前提でイメージはすぐ湧きました。まずペットボトル接合部を探し、COCRE HUBで見つけた「ペットボトルダンベラー」を参考にしました。 
              • 上部の管はTinkercadで見つけたパーツを応用。息子に何度も協力してもらい、ベッド(仰向け)と車椅子に座った場合とで適切な角度や長さを割り出しました。試作は30個近くで、特に筒の内側の形状や角度には工夫を重ねました。
              • フィラメントは最初は白色でしたが、「少し透けるくらいが使いやすい」と感じ半透明PETGに変更。取っ手や簡易キャップも作り、利用シーンに合わせた2パターンにしました。(簡易キャップはストレート型のみ)
                • ストレートはベッドでの仰向け、くの字型は座位での使用を前提に、ストレート型はよりフィットしやすい細身の仕上がりに。
                • サイズは2歳~12歳の男児を想定。トイトレにおすすめ。
                • 使用後はコネクタを水で洗い流し、取っ手を引っ掛けて乾燥可能。洗浄し繰り返し使える。 
                • 急ぐ時も迷わない。くの字型は上下が判別しづらい形でも、取っ手が目印になるだけでなく、ペットボトルと接続する際に指が引っかかり回しやすい(トイレがギリギリでも手早くできるように)。 
                • 簡易キャップをつけることで、ペットボトルを誤って横倒しにしても大惨事は防げる。※完全に密閉するものではないので要注意!
                • 半透明PETGがベター。(少し透けるので位置が確認しやすい、完全クリアより介助者は受け入れやすい)
                • 充填率10%で強度は相応にあり、床に数回落としても破損せず。
                • 簡易キャップはより柔軟なTPUのほうがおさまりが良い(PETGでも可)
                • サポートは付けて印刷するのがおすすめ。
                • (※当初は「縁」をつけておらず、バリが出ないように、性器が触れる入口側を底面に指定して印刷していたが、最終版はペットボトル接続側が3Dプリンタのプレート面に接地して印刷する)
                1.  最初はペットボトルのフタ上面を外して管を付けただけにしたところ、コネクタを何度も回して接続する必要があり(ボトルがどんどん管の奥へ入ってしまう)、着脱が面倒に感じた。
                2. 次にドーナツ型の薄い蓋状パーツを間にかませたら、そこに尿や洗浄後の水も溜まりやすく拭き取りづらいと判明。
                3. すり鉢状パーツ(底面は穴あり)に変更してペットボトルの口サイズとピッタリに仕上げるも、ペットボトル接続部とのわずかな隙間で尿漏れが発生。完全に防げず悩む。
                4. 漏斗を参考に、ペットボトルの口の中に漏斗の先端パーツの底が2mm程入り込むように設計変更。勢いのある尿量でも流れる直径を確保し、最終テスト合格!
                • ペットボトルのフタに穴を開けただけでは隙間から尿が漏れるため、漏斗状の管の先端をフタに突き通す形を採用(ボトルに落ちた液体を逆さにすると漏斗なので漏れる)
                • 曲がりの試作品を試す中、仰向けで尿の勢いが少ない時や排尿終わりかけの時に、コネクタ内の尿が性器側へ逆流する現象が何度か発生。仰向けなら完全ストレートのほうが尿が落ちやすい(液体が流れる少しの角度があれば大丈夫)と判明。
                • 使用後の尿入りボトルを誤って横倒しにするケースを想定し、簡易なキャップも柔らかいTPUで作成。完全に漏れないわけではなく、前述の通りに少量の漏れは発生する前提での使用となる。
            • 息子本人はより快適に、尿漏れも発生せずに排尿をすることができるようになりました。毎日何回も排尿するので、この状況はQOLに直結し、本人も介助側も満足度が高いです。特に車椅子に座っているときの排尿は、息子も介助者側も格段にやりやすくなりました。訪問看護師の皆さんにも好評です。

              今年、息子は初めて飛行機の旅を経験し、大阪万博へも行きました。行動範囲がどんどん広がる中、また思春期を迎える息子にとっても、排尿介助がスムースなのは非常に意義があります。暮らしをよくするための工夫をこれからも続けていきたいです。
              • 仕上りサイズは次の通り。(判別のため着色しています)

                【ストレート型:紺色】
                ・底面から最上部までの高さは78.7mm(フタ部分を含まない)
                ・上部の挿入口(内径)は、28mm×23mm
                ・横幅は最大46.0mm(取っ手部分を含む)
                ・簡易キャップの高さは35.0mm
                ※ストレート型のみ簡易キャップあり

                【くの字型:黄色】
                ・底面から最上部までの高さは87.8mm(フタは作成無し)
                ・横幅は最大47.76mm(取っ手部分を含む)
                ・管の外径32.4mm
                ・曲がり角度は20度
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            References

              Usages

              • 使用方法

                1. 清潔な空のペットボトルと、清潔なコネクタを用意する
                2. ペットボトルのフタを閉める要領で、コネクタを回してペットボトルに接続する(取っ手が上にくるようにする=取っ手が性器の裏側へ回り込まない)
                3. 当事者の尿道口をコネクタ内に挿入し、排尿する(コネクタの角度に要注意)
                4. 排尿後、コネクタからそっと性器を抜く(ティッシュも添えるとベター、必要に応じて簡易キャップも使用)
                5. 尿を処理し、コネクタや簡易キャップを洗浄して乾燥させる
              • 使用に関する注意

                • 排尿中は本人あるいは介助者がしっかりコネクタをホールドし、適切な位置や角度にて使用する
                • 変形や破損に繋がるため、コネクタや簡易キャップを熱湯で洗ったり、熱湯消毒したり、アルコールに浸けおいたりしない
                • コネクタや簡易キャップは洗浄後、自然乾燥がベター(強い日光やドライヤーを当てるのはNG)
                • キャップは簡易的なものなので、キャップだけを持ちあげてペットボトル本体を運搬しない(簡易キャップから下がパッと外れ落ちる能性大、必ずペットボトル本体を手で持つ
                • 簡易キャップは密閉性に欠けるため、あくまで補助的な利用に留める
                • コネクタの取っ手や簡易キャップのつまみに強い力を加えすぎない

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