ウミガメの足跡を見分けるための3Dモデル

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【FAB3D CONTEST 2018 夏休みの自由研究】
制作:はお
協力:e.lab<放課後のまなび場> 鹿児島県の離島、沖永良部島に在住しています。私は去年まで東京に住んでいましたが、動物が好きで保護活動に興味があったので沖永良部に引っ越してきて、「うみのたからものプロジェクト」を立ち上げ、ウミガメの保護をしているウミガメネットワークの活動にも少しではありますが、参加させていただいています。 その活動の一環で、近所の浜に産卵跡がないか観察していたのですが、母が、アカウミガメとアオウミガメの足跡が見分けられないと言ってきました。そこで、3Dプリンターで印刷したら、モデリングで2つの足跡のそれぞれの特徴をおさえることができ、印刷できたものがあれば説明もしやすくなるのではないかと考え、アカウミガメとアオウミガメの足跡の違いをテーマに、ウミガメネットワークの山下さんにお話を聞いたりしながら足跡を観察して、色々な本や写真で特徴を見つけ、モデリングしたものを少しずつ調整しながらより正確になるように作りました。 3Dプリンターもモデリングも全然したことがなかったので、今回は父に手伝ってもらいました。これから自分でも挑戦してみたいです。

Materials

    Tools

      Blueprints

        Making

        • 私は奄美群島のひとつの島である沖永良部島に住んでいます。奄美群島には、4種類のウミガメがいます。

          アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、オサガメです。
          その中で、アオウミガメとアカウミガメは多くの人が知っています。タイマイ、オサガメはあまり知られていないかもしれません。

          写真は沖永良部島の浜で産卵したあと、海に帰っていくアカウミガメです。
          • かめ目 ウミガメ科
            甲長:70-100cm
            体重:70-180kg
            生息地:太平洋、大西洋、インド洋
            食事:貝、カニなど

            沖永良部島の浜で産卵と子ガメの孵化を見ました。
            写真は奄美大島の海洋生物展示館にいた子ガメです。お腹に注目してください。
          • かめ目 ウミガメ科
            甲長:80-100cm
            体重:70-230kg
            生息地:熱帯から温帯
            食事:藻、カニ・クラゲ(子ガメは)など

            奄美大島と沖永良部島のビーチで一緒に泳ぎました。
            写真は奄美大島の海洋生物展示館でえさをあげたときです。えさはキャベツでした。人にとても慣れていて、えさがもらえそうだとわかるとすぐに寄ってきます。
          • かめ目 ウミガメ科 タイマイ属
            甲長:70-90cm
            体重:30-70kg
            生息地:太平洋、大西洋、インド洋
            食事:白化したサンゴについた海綿動物

            見たことがありません。まれに沖永良部でも産卵することがあるそうです。
            沖縄に修学旅行に行ったら、美ら海水族館で見れると思うので楽しみです。
          • かめ目 オサガメ科 オサガメ属
            甲長:120-189cm
            体重:250-700kg
            生息地:熱帯から温帯
            食事:主にクラゲ

            世界最大級のカメ。いつか見たいです。
            写真は閉館してしまった屋久島のウミガメ館で大牟田さんにお話を聞かせてもらったときのものです。
        • 沖永良部島でよく見られるのはアオウミガメとアカウミガメです。

          アカウミガメとアオウミガメは子ガメのほうが見分けやすいです。なぜなら、アオウミガメはお腹が白くなっていて、アカウミガメは全体的に黒いからです。大人になると、どちらもお腹が白くなります。なので、肋甲板や前額板の数、頭の形や大きさなどで区別します。
          • 肋甲板:4枚
            前額板:2枚
            ・頭が丸く、小さい
            ・付着生物がいない
            ・子ガメはおなかが白い
        • 沖永良部島ではアカウミガメとアオウミガメがよく産卵します。産卵跡は足跡で見分けます。

          北太平洋に生息するウミガメの産卵地は日本だけです。アオウミガメは他の国にも産卵地があります。アオウミガメの日本国内の産卵地は小笠原諸島・南西諸島です。

          ウミガメの産卵の流れは、交尾→上陸→産卵の順番で、時期は5月から7月とされていますが、沖永良部島では9月になっても産卵跡がみつかることがあります。

          産卵する場所もアカウミガメとアオウミガメで違います。
          アオウミガメは植物が生える場所まで来ると穴を掘りますが、アカウミガメは植物が生える場所より海側に穴を掘ります。

          アオウミガメは慎重に産卵するため、あまり見つけられません。
          • 特徴
            ・足を左右交互に動かして進むので左右非対称
            ・体重が片手にかかるので、跡が深い
            ・尾の跡は比較的不規則になる
            ・浜の途中でも産卵する
            ・産卵を始めるのは5月頃から
          • 特徴
            ・両足を同時に動かして移動するので左右対称になる
            ・両手で体を支えるので、跡が浅い
            ・尾の跡は比較的まっすぐ
            ・浜の奥まで進んで産卵する
            ・繊細なので月明かりの明るいときには産卵しない
            ・産卵を始めるのは6月頃から
          • 上にまとめたアカウミガメとアオウミガメの足跡の違いを比較して、足跡の3Dモデルを作ることにしました。
          • ディスプレイスメントマップ用の画像では、白とグレーと黒を使って凸凹を表現しています。この画像を3Dモデリングソフトで作ったボックスにはりつけると3Dモデルができあがります。かくのが難しくてうまくできなかったので、父に特徴を伝えながらかいてもらいました。

            Photoshopとペンタブを使って、白黒で足跡の凹凸を表現しています。白が1番でっぱっていて、黒が1番へこんでいます。
          • modo indie10で作ったボックスのディスプレイスメントマップに、作成した白黒の画像を適用すると3D化されました。

            思っていた作り方と違ったのでびっくりしました。
          • できあがった3DデータをFusion360でSTLに変換して、afinia studioからafinia 3D H400を使って小さなサイズでプリントしてみました。

            アオウミガメの足跡の凹凸の差が少なく、跡がよくわからなかったので、もう少し立体感を出すためにディスプレイスメントマップの設定を変えてもう1度プリントしてみました。

            すると、今度は深くなりすぎて足跡の向かう向きがわかりにくくなってしまいました。
          • 山下さんからOKをもらえたので、アオウミガメの足跡の方向がわかるようにディスプレイスメントマップ用の白黒画像を調整して、もう1度3Dモデルを作り直してから、大きなサイズでプリントしてみました。

            でも、どうしても左の奥側が持ち上がってしまい、変形してしまいます。
          • プリントするサイズを小さくしてプリントしたらうまくいきました。使うフィラメントの種類によっては、変形しにくくなるそうです。ABSは変形しやすく、PLAは変形しにくいそうなので、本番ではPLAの木質フィラメントを使用しました。ちょっと濃いですが、砂のような色なのでちょうどよかったです。

            アカウミガメとアオウミガメの足跡の違いがわかりますか?
        • 砂の中で育った子ガメは、産卵後約2か月ほどで孵化します。気温が高いと期間が短くなるそうです。約1週間かけて兄弟たちと天井をくずし、外に出ます。

          子ガメの性別は砂の温度で変わります。約29℃より高かったらメス、低かったらオスになります。
          温暖化が進んで、オスの数が減っているという調査結果もあるようで心配です。
          • 子ガメには2つの能力があります。
            ひとつは走行性です。明るい方向に向かう習性で、海に向かうための習性ですが、外灯などの光に向かってしまうこともあります。そのため、ウミガメの産卵がある浜では光をつけないようにする必要があります。
          • もうひとつはフレンジーです。前肢を活発に動かす行動で、砂から出てきた10~20時間が1番元気です。これはできるだけ早く沖に出るためです。沿岸域では特に捕食者に狙われやすいので、いち早く沖に出ることが重要です。
        • ウミガメは年々減少しています。
          沖永良部でも、今年は産卵数が少なく、台風も多かったので孵化もあまり確認できていません。

          沖永良部島ウミガメネットワークの調査によると2018年のウミガメ上陸・産卵数は以下の通りです。
          アカウミガメ 上陸98回。産卵78回
          アオウミガメ 上陸71回。産卵42回

          2017年は以下の通りなので、とても数が減っていることがよくわかります。
          アカウミガメ 上陸131回。産卵107回
          アオウミガメ 上陸147回。産卵83回
          • ウミガメが減少している原因としては、砂の流失や光と騒音などの妨害による産卵に適した場所の減少、温暖化によるオスの減少、卵の捕食による子ガメの孵化の減少だといわれています。他にも海に漂っているごみを誤って食べてしまったり、漁業による混獲も原因のひとつです。

            しかし、混獲しないように工夫された網があります。
            また奄美大島では海辺の外灯に赤色のカバーを付け、産卵しに来たウミガメに刺激を与えないようにして、子ガメを海に迷わず行かせるようにしているそうです。

            沖永良部でもウミガメの観察をするときは、ウミガメネットワークの山下さんの案内のもと、携帯で写真を撮ったりせず、赤色の懐中電灯を使って観察しています。
        • わたしは沖永良部で「うみのたからものプロジェクト」というものを行っています。これは浜でごみを拾いながら、たからものをみつけたり作ったりするプロジェクトです。たからものを販売して得た利益をウミガメや珊瑚の保護活動に使いたいと思っています。最初は母とふたりで活動していたのですが、今では友だちや地域の人、島外から来た人も時々いっしょに活動してくれるようになりました。

          この看板は、浜で拾った木の板にペンキを塗って、シーグラスやシー陶器、貝殻を使って、放課後のまなび場でみんなといっしょに作りました。沖永良部にはくじらも来るので、くじらのデザインになっています。ウミガメもいるのがわかりますか?
          • 名古屋の金城学院大学の佐藤研究室のみなさんが8月に沖永良部まで来てくれて、沖永良部でごみ拾いをしながらみつけたシーグラスやシー陶器を使って、カンボジアの人といっしょにすてきなアクセサリーを作ってくれました。

            このアクセサリーを販売して利益が出たら、海の保護活動に寄付してくれるそうです。
            http://shinaidiagirl.wixsite.com/diagirl-2015
          • ごみ拾いをしながらみつけたうみのたからものを通して、いろんな人に自分にできることを考えてもらえたらうれしいです。もちろん、難しく考えなくていいです。海に行ったときにごみを持ち帰ったり、少しだけごみ拾いをするとかでいいので、行ってくれたら幸いです。
          • 今、世界では、海の汚染を止めるためにプラスチックを禁止し始めている国が多く、特に、ストロー・レジ袋などについての規則が多いようです。IKEAやスターバックス、マクドナルド、ディズニーなどの企業も積極的にプラスチックの禁止に取り組んでいます。

            日本でもレジ袋の有料化を義務付けると環境省が発表しましたが、プラスチックが問題になっていることを知らない人が多いため、まずは、個人的な活動を広げることが必要だと思います。

            結局は私たちがプラスチック禁止を受け入れることが一番難しいけど、大切だと思います。
          • 今回、3Dプリンターを使ってみて、プラスチックのごみがたくさん出ることが気になりました。

            沖永良部は珊瑚礁が隆起してできた島なので、水道水にたくさんの石灰が入っていてシャワーがつまったりして困っています。たとえばフィラメントの素材がプラスチックではなくて石灰を利用できたり、もっと自然にやさしい素材になったらいいな、と思いました。
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